入管庁が最終報告

 

スリランカ人女性死亡「危機意識欠けていた」 入管庁が最終報告

名古屋出入国在留管理局に収容されていた女性が死亡した問題の最終報告発表の記者会見で、頭を下げる出入国在留管理庁の佐々木聖子長官=東京都千代田区で2021年8月10日、小出洋平撮影拡大
名古屋出入国在留管理局に収容されていた女性が死亡した問題の最終報告発表の記者会見で、頭を下げる出入国在留管理庁の佐々木聖子長官=東京都千代田区で2021年8月10日、小出洋平撮影

 名古屋出入国在留管理局(名古屋市)に収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が今年3月に死亡した問題で、出入国在留管理庁は10日、「危機意識に欠け、組織として事態を正確に把握できていなかった」とする最終報告書を発表した。体調不良の訴えや、顕著な体の異変への医療的な対応が不十分だったとし、併せて再発防止に向けた改善策も提示した。

 また、当時の名古屋入管局長と次長を訓告、警備監理官ら2人を厳重注意の処分にした。

 ウィシュマさんは留学生として2017年に来日。19年1月から不法残留となり、20年8月に名古屋入管に収容された。21年1月15日以降、吐き気や体のしびれを訴え、体調を悪化させて3月6日に亡くなった。

 報告書は、ウィシュマさんの死因は病死と認められるとしつつ、複数の要因が影響した可能性があり、死亡に至った具体的な経過は特定できなかったとした。

入管法改正案に抗議して行われたデモ行進で、名古屋出入国在留管理局で3月に亡くなったスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんをしのぶプラカードを抱きしめ歩く女性=東京都中央区で2021年5月16日午後3時35分、吉田航太撮影拡大
入管法改正案に抗議して行われたデモ行進で、名古屋出入国在留管理局で3月に亡くなったスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんをしのぶプラカードを抱きしめ歩く女性=東京都中央区で2021年5月16日午後3時35分、吉田航太撮影

 その上で、名古屋入管の医療的な対応について検討。週2回勤務の非常勤内科医師しか配置できない制約がある中、名古屋入管の幹部は、ウィシュマさんらの体調や診療の申し出を的確に把握し、必要な対応を検討・指示すべきだったのに、こうした体制を整備していなかったと指摘した。看守の多くはウィシュマさんの体調不良の訴えを「(一時的に収容を解く)仮放免許可に向けた誇張したアピール」と疑っており、職員の教育や、意思疎通により体調を把握するための通訳の活用も課題に挙げた。

 ウィシュマさんは収容中に2度にわたり仮放免を申請していたが、認められずに亡くなった。報告書は、体調不良者には「柔軟に仮放免を可能とすべきだ」とした。また、元交際相手から暴力を受けていたと主張しており、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者かどうかの検討をしなかったことを反省点とした。支援者からの申し入れ内容の情報共有も課題とした。

 こうした点を踏まえ、「人権を尊重し、内外から信頼される組織になるため、改革を進める」として改善策も提示。全職員の意識改革▽医療体制の強化▽外国人の健康状態を踏まえた仮放免判断の適正化――などを挙げた。

 入管庁の調査チームは、関係者63人から延べ139回の聴取を実施。外部の有識者に意見も求めた。【山本将克】

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